あらゆる技術を結集させて、水晶デバイスは完成する

高校時代から化学に関心を持ち、大学では無機素材（機能性セラミック）の合成研究に従事した。就職に当たって、多様な選択肢が存在する中で、関心のある企業すべてを訪問。その背景には、譲ることのできない、ある想いが存在していたという。

「社会にとって欠かせない分野かどうか。重視していたのは、そこでした。工学部出身であるため、エンジニアとして働きたいとは思っていましたが、どうせなら世の中の役に立つモノづくりがしたかったんです。就職活動を始めたときには、水晶デバイスも、NDKという企業の存在も知りませんでしたが、ここには、私が求める要素がありました。とくに魅力的だったのは、周波数をキーワードに人々の営みに欠かせない社会インフラを支える技術に貢献できることです。決して、目に触れることはないけれど、人知れず、世の中を支えている。そこに強く惹かれたんです」

水晶デバイスの一つである水晶振動子は極めて薄い水晶片（ブランク）に薄膜の電極を形成し、セラミック素材のパッケージに密封する事で完成する。また水晶発振器は、水晶振動子と発振回路の組み合わせで作られる。その製品開発においては、結晶育成加工、蒸着・スパッタリング、接着結合、封止（金属溶接・ガラス結合）、装置冶具設計（機械加工）、回路設計といった多様な技術や知見が生かされているのだと言う。

「NDKは原材料である水晶の結晶を自社内で人工的に育成していますが、単に結晶メーカーという訳ではありません。その高品質な結晶を使って精密な電子部品を作っています。さらに言えば水晶デバイスだけでなく、様々な周波数の制御と選択に関わる技術・製品に強みのある企業です。私たちの製品は、さまざまな知識と技術が集積したもの。その開発には、さまざまな分野に強みを持つ、技術者が関わっています。たとえば私自身はいわゆる電気電子系ではなく、無機化学系を専攻してきました。現在は製品のパッケージを構成するセラミック製のカバー・ベースの評価を担当していますが、大学時代に学んだことをしっかりと仕事に活かせていると感じています」

部門を越えて、品質を守る

彼のミッションは、NDK 製品に用いる部品・材料の評価を行うことだ。新製品の開発や、既存製品の改良に際し、設計・開発担当から寄せられる「新たな部品・材料を使いたい」という声を受け、製品の要求品質を満たすものであるか、部品・材料の観点から検証していく。

「基本的な評価方法は存在するものの、評価する製品も、用途もさまざま。無数の選択肢から、適切な評価方法を考え、品質を担保する最適解を市場や顧客の需要に合うように、導き出していかなければいけません。しかも、NDKの製品は、目に見えないような、小さなものばかり。頭を悩まされることが多いですね」

彼の仕事は、目の前の製品を評価するだけではない。求められる品質を守るべく、設計担当者と連携する。素材を変更したことで、製造に影響が出ないかを現場の担当者とすり合わせる。さらには、素材のサプライヤーと改善に向けた折衝を行う。部門を横断した役割が求められるのだ。さらに、複数の評価案件を並行して担当することが当たり前だという。

「確かに、仕事は大変です。けれど、私の仕事はNDKの品質を実現するものであり、その成果は明確な数値として表れます。そして、その品質は世の中に確かな価値を届けていくことにつながるわけです。大きな裁量を任されていることにやりがいを感じていますし、誇りを持って自らの仕事に向き合えています」

品質を創る

自らが評価し、守った品質が世の中を支えている。多忙な毎日の中でも、彼は自らの使命を真摯に、確実に全うし続ける。部品・材料評価の仕事が、製品設計のキーとなり、またその仕事の先に、多くの人々が、実現すべき未来があることを知っているからだ。

「NDKの品質を創り、確かな価値を届けていく。それが、私たちの仕事です。たとえば、自動車に搭載する水晶振動子には、激しい振動や高温・低温にさらされる環境下でも正確に動作する等の高信頼性が求められます。この評価において、単に求められる数値をクリアすることだけを目的にするのと、『事故のない、安心・安全な製品を届ける』ことを目的にするのとでは、後者の目的の方が、自ずと仕事に対するモチベーションが高くなります」

自らの仕事の先にあるものを想像し、工夫とチャレンジを繰り返す。その姿勢は、NDKの強さを象徴するものだ。現状に甘んじることなく、さらなる成長を見据えて、日々の仕事に向き合っている。

「現在、所属するチームには技術においても、これまでのキャリアにおいても、多様なバックグラウンドを持つプロフェッショナルが集っています。同じ目的を共有し、それぞれの強みを結集し、NDKの品質を創る。そんなチームで働けていることを誇りに思っています。先輩方の背中を目標に『これだけは自分が一番』という力を身につけていきたいですね」